1983年に連載開始され、当時社会旋風を巻き起こしたグルメ漫画&アニメ「美味しんぼ」
そこに一貫した主軸として、物語の中心に据えられていたテーマ。
それこそが、「究極のメニュー」づくりでした。
子供ながらに、アニメ「美味しんぼ」に出てくる料理に対する職人のこだわり。
今では料理マンガは王道ですが、当時では珍しく、私にとって食文化なんたるかに初めて触れた経験は、このアニメだったと思います。
懐かしい....。
はてさて、あれから40年経ち、私は45歳に。
事業家として財を築き上げ、その過程で出逢うご縁によって、今やあらゆる文化の最先端を提供頂ける有り難い立場となりました。
このオアシス倶楽部内でも、ブログで紹介させて頂いたリゾートトラスト関連施設、芦屋ベイコート倶楽部にて、先日、2022年現在の「究極のメニュー」を食す機会に恵まれましたので、久々レポートしたいと思います。
※以下に紹介された料理は、芦屋ベイコート倶楽部・鉄板焼き料理長 小椋シェフが10、11月限定80組にのみ提供する「究極のメニュー」であり、オーナー会員の中でもシェフと面識のある方が、インビテーションによってのみ参加できるもので、一般公開はおろか、会員内でも知る人ぞ知る「秘密の企画」となっています。
【幻のキャビア】
アルマスキャビア
(ゴールデンスターレット)
世界最高と呼び名の高いキャビアは、いくつかありますが、それらを味わい尽くした、アラブ大富豪の特別な依頼に応えて、小椋シェフがフランスで活躍していた時代に提供した一品。プロのフレンチシェフですら、その存在を知る人は少なく。
正に名実共に幻のキャビア。
このキャビア、見てわかる様に金色に輝く不思議な様相...。
なんでこんなことになるのか?
それは、突然変異種の真っっ白なチョウザメからのみ取れるという逸品。
味は一般的な黒いキャビアと比べて、味が芳醇で、薫りがしっかり鼻から抜けて、余韻だけ永く優しく残る感じ.....。
食感は、プチっと感は控えめで、モチッと感が強いので、口に含んだ第一印象は、キャビアな感じがしない。
しかし、その後に超濃厚なキャビア味覚に襲われる為、これが恐ろしく洗練されたキャビアであることを理解できる。
今回食したキャビアは、小椋シェフの人脈と人望のなせる技にて、食すことが実現されたらしく、と!に!か!く!回ってこない。
待っても待っても待ってもぉーーーー...来ない。
バカ高い金額を支払えるなら別。
これとは別種のアルマスがネットで売られているが、日本に提供されている数量は3個。
笑笑(少なすぎやろ)
250g(1缶)で、92万5,925円(約100万円)
【白トリュフのカルボナーラ】
世界最高峰白トリュフと自家製タリアッテレ
先ずは、このサイズ感と美しさを見て頂きたい。非の打ち所がないトリュフ。
ダイヤモンドで言うところの4cが全て最高ランクで仕上がっているラウンドブリリアンが、
目の前にこう...
ぽんっっ...と、
こう....ポンっと。
これは、どう使うのか。千の料理を、全て規格外にランクUPさせる魔法の珍味なのです。
今回、小椋シェフが組み合わせに選んだ品は、なんと「カルボナーラ」
クリームとトリュフは相性が良い。
しかし、食して思ったことは、もはや私の舌が記憶しているカルボナーラではない。
私は昔、とても苦労していた時期が永く極貧生活も経験しております。
その頃、30年前のパワステも付いてない軽自動車に乗っており、それが車という商品への認識、つまり常識として定着していたのですが、後に初めてメルセデスベンツに乗り換えた時、これが「自動車」という文明のリキなのだと痛烈に感じたのを思い出しました。
壊れる自己認識。崩れ去る固定概念。
静かな....お味...。
優しくヘルシー。
静かな中に、究極のトリュフが走り去っては消え、踊り去っては消えて逝く....。
腹に残るものは一切なく、より食欲は増すばかり。
私は、塩味のみを美味と信じていたのだろうか...と、真剣に考えさせられてしまいます。
【芳潤な香りに包まれた黒トリュフのパイ包み焼き】
丸ごと一個の黒トリュフを、フォワグラとともにパイ包みにし、トリュフソースと絡めていただく料理です。
ナイフを入れた瞬間に芳潤な香りに包まれる贅沢な一皿。
これは、薫りとスパイスが華々しく飛び交う花火大会。といった印象でした。
味、というよりも薫りの印象が強く、味に意識があまり向かないのです。
表現が難しい。
皆さんは、味覚より嗅覚による印象が強い料理。経験ありますか?
【ブイヤベース】
瀬戸内産のホウボウを丸ごとスープに
駿河湾アカザエビ、玄界灘マダカ鮑、フカヒレなどの魚介類を
香味野菜で煮込むフランスの寄せ鍋料理
今さらではありますが、この「添書き」を読むだけで、このコースの一品一品が、とてつもなく奇跡的な食材で構成されているわけですが、正直、普段から美食家を自負している私でも、もう少し見聞を広げてから頂くべきであったと思うばかり。
ゴルフコースに初めて出るにしても、せめてマナーくらいは身に付けておきましょう。に近い場違い感が出てしまうのでした。(この記事は、後日、予備知識を得ながら書いております)
アカザエビとは、いわゆるテナガエビの種類ですが、まぁ....規格外に大きい。立派。
アカザエビの中でも見るからに、超一級品であることが目で感じます。
とても希少な海老で、特に出汁の濃厚さ旨味は、他の高級海老を寄せ付けないと言います。
実際、看板に偽り無し!のアカザエビさんでした。
スープの味わいが尋常じゃないレベルに香る、薫る、顔ユルむ....
特に、丁寧にカットされたアカザエビを食す時、このブイヤベースの源泉となっている存在が、この海老であることを思い知らされます。
そして、もう一つ幻の食材が。
それが「マダカ鮑」です。
鮑というだけで、それはそれは貝の王様であります。
下世話な話、安くてもキロ2万円以上はします。
その鮑は黒鮑(クロアワビ)と言い、水深5メートル程度に生息しており、世に出回る高級鮑の代名詞となっているのです。
それに対して、この「マダカ鮑」は水深15メートル以下に潜水することで、ようやく手にすることができる海人泣かせな存在。
色も黄色、というか金色。
サイズも黒鮑よりずっと大きく、30センチを超える巨大な個体も存在します。
食感は黒鮑よりも弾力が強いにも関わらず、柔らかい。
コリコリとした食感が、柔らかいのに浮き彫りとなっておると同時に、お味ときたら、まぁ...信じ難い美味しさ。
上には上のレベルが存在するのは、どの世界でも共通のようでございます。
同じく高級食材にフカヒレは、マダカ鮑よりも、細かな弾力ある食感が、コントラストを生み出してくれます。
もう、何がなんだか....
この辺りで、もう心も胃も満たされている上に、脳はとろけだしそうで、感動を記憶することが困難な状態に。笑笑
【舌平目のムニエル】
フランス王国ルイ14世の宮廷で極めて評判の高かった高貴な魚料理
ここで、コンサバティブな伝統の一品が提供されるあたり、シェフのフランス文化への荘厳なる敬意を感じますね。
私にそう思わせるのは、この一品には敢えて特別な装飾や、新旧を差別化する為のサプライズが、不要に加えられていないと感じたからです。
食した瞬間は、スナックを口にしたと感じさせる小気味良い食感の後、直ぐ消えて無くなりそうな儚さと淡さを予感させます。
これが高級魚を調理したものであると確認できるのは、飲み込む直前に少し。
舌が、いつ喉に送れば良いかを、無意識で理解しているので、レビューを書くために口内に、無理に留めるという蛮行にはとても及びませんでした。
1643年に在位したルイ14世が高く評価した味。
約380年前の美食が、2022年度最新最高のコースの中で振る舞われるという、時代を超えたコラボレーションに何とも言えない余韻を得られるものとなりました。
【グラニテ】
フレーバーウォーターとフランス菓子メレンゲを分解して調味料として再構築したシェフ小椋のスペシャリテ
ラストパートに入る前の、お口直しの一品。
一言で現すなら生姜風味のシャーベットなのですが、実は生姜は一切使用しておりません。
研究の末、胃をスッキリさせる成分で、生姜味を創り上げたというクリエイティブな作品。スッキリリセットしてくれる天然素材100%のとっても美味しい胃薬です。
【神戸ビーフ最優秀牛のミニッツステーキと神戸ビーフフィレの鉄板焼】
※“世界で最も高価な9種類の食べ物”に選出された最高品質神戸ビーフの最優秀牛をOGURAスタイルで
有望なる若きシェフ達の師である小椋シェフは、弟子達にローストビーフの心得として、肉に与えるストレスを最小限に軽減することを語っておられます。
なかには、既に肉塊と化しているミートが、ストレスを感じるのですか?と、不思議そうに質問されることもあるそうです。
両面を均等に.....。
ゆっくりと上質な脂を、チャンピオン神戸牛の肉質に、じっくりと一体化させてゆくことで、これ以上ない旨味を再現した鉄板焼きの最高峰ができあがるのです。
小椋シェフと、チャンピオン神戸牛が揃うことで、はじめて奏でられるデュオ。
フィレステーキ5gで、五感の全てを満たすことができます。美味しすぎて、とても多くは食せません。
僅か1分で仕上げる上質な薄焼き牛。
その名もそのまま、ミニッツステーキ。
頬が落ちるという表現が、これ以上に相応しい対象が存在すると思えません。
今回頂いたチャンピオン神戸牛。
数ある畜産家の中で、最も最も素晴らしい雌牛♀(雄牛♂は攻撃的な性格が、肉質を下げるらしいです)1頭が品評会で選ばれますが、少なくとも過去3年は同じ畜産家の方が育てた雌牛だそうです。
プロの目利きは、後ろ姿(お尻)を見れば、どの雌牛がチャンピオンになる候補か分かるらしいです。
【タラバ蟹のパエリア 国産松茸のだし茶漬け】
※イタリア米にタラバ蟹のミソ・身・スープを入れ石焼で炊き込むパエリア
蟹の強烈な薫りが、再び食欲を掻き立てます。
とは言え、もうひと口ふた口が精一杯。
上質な堅さを維持するパエリアの食感は、私の心に、お茶漬け向きだと確信させます。
出汁茶漬け用に用意された国産松茸の土瓶蒸し。
もはやこれだけで、十分な秋の風物詩ですが。笑笑
これを茶漬けの「茶」の役割に使うわけですから、贅沢さ加減に笑うしかない状態です。
蟹味噌、蟹の身、松茸、のトワロで奏でる〆の一品。
噛まなくても胃まで綺麗に流れて来ます。最上の風味が喉を通して記憶に残る。如何ともし難い経験をさせて頂きました。
【ハニートリュフ】
※ハニートリュフと安納芋のブリュレ。
ドナウ川流域アカシアの林の中で収穫される世界で最もユニークな甘いトリュフです。
フィナーレとなります。
とても甘いこのトリュフは、何の味付けもなされていません。
ありのままを、ただ削ってスライスされた異次元風味の極上トリュフ。
その大きさもさることながら、形、色、薫り。
最高の料理には、最高の素材が必要なのでしょうが、本日の素材は揃いも揃って、特別なコネクションを持たずして仕入れ不可能な品の数々。
許されるならば、芦屋ベイコートに10日宿泊して、毎晩一品づつ味わいたい。
それが私の本音となった未体験だらけの「2022年小椋流究極のメニュー」でした。
私、今年45歳を迎え、年を重ねるに従って、人の欲も、望みも、願いも変わるものだと感じます。
若き頃に比べると、余計な色気を望まず、刺激よりも安寧に身を置き、誠実である姿を鏡と見立てて、心に問うような毎日。
されど、この食欲というもの。美味しいものを頂いている時の幸福感たるや、万年変わらぬ人の幸せの形やも知れません。
年に一度の至高の贅沢。
妻と共に心から感謝して胃袋に納めさせて頂きました。
料理という名の芸術、素晴らしいアーティストであられる小椋シェフ。本当にありがとうございました。
また、来年も伺います。笑笑
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